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仙台高等裁判所 昭和40年(う)340号 判決 1966年4月19日

本店所在地

盛岡市上田字西下台一六番地

岩手製綿株式会社

右代表者代表取締役

鎌田逸郎

本籍

盛岡市上田字西下台一六番地

住居

東京都練馬区豊玉北四丁目二八番地

岩手製綿株式会社代表取締役

鎌田逸郎

明治三〇年一〇月一日生

右の者らに対する法人税法違反各被告事件について、昭和四〇年一〇月一九日盛岡地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人らから各控訴の申立があつたので、当裁判所はつぎのとおり判決する。

主文

本件各控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人らの平分負担とする。

理由

本件控訴趣意は、弁護人佐藤邦雄名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴趣意第一点(事実誤認)について

所論は、本件棚卸し除外分八、八七七、六五五円のうち三、〇〇〇、〇〇〇円は本件前年の昭和三五事業年度と重複課税されたというのであるが、原判決挙示の証拠、特に武蔵佐太郎の検察官に対する供述調書(二通)によると、昭和三五事業年度の棚卸し除外分三、〇〇〇、〇〇〇円(正確には二、八七二、九五〇円)は税務当局に発見されたため、被告人鎌田の指示により、本件申告(昭和三七年五月二九日)に先だち、計上洩れとして、被告人会社の帳簿上昭和三七年三月三一日(昭和三六事業年度の末日)付で整理され、本件昭和三六事業年度期末の棚卸し除外分には、前年度の棚卸除外分(在庫計上洩れ)は入らないことが認められるし、なお当審証人加藤功、武蔵佐太郎の各供述に徴しても、同様昭和三五事業年度以前の棚卸し除外分が、昭和三六事業年度のそれと重複計算されたものでないことが認められる。それ故前記重複課税された旨の所論は当らないものである。また所論の棚卸し除外分の計算につき信を措き難いものがあるとは認められない。記録を精査し、当審における事実取調の結果を総合しても、原認定に誤りあることは認められない。論旨は理由がない。

同第二点(量刑不当)について、

所論にかんがみ、記録を精査し、本件犯行の経緯、態様、被告人会社の業態、被告人鎌田の年令、経歴、境遇、その他諸般の事情を総合してみると、原審の被告人らに対する量刑は、いずれも重過ぎるものとは認められない。論旨は理由がない。

よつて刑訴法三九六条により、本件各控訴を棄却することとし、当審における訴訟費用の負担につき、同法一八一条一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

検察官 中村源吉 出席

(裁判長裁判官 細野幸雄 裁判官 畠沢喜一 裁判官 寺島常久)

昭和四〇年(う)第三四〇号

控訴趣意書

被告人 岩手製綿株式会社

右代表取締役 鎌田逸郎

被告人 鎌田逸郎

右に対する法人税法違反被告事件につき別紙の通り控訴趣意書を提出します。

昭和四十年十二月十一日

右弁護人

弁護士 佐藤邦雄

仙台高等裁判所第二刑事部 御中

第一点 重大なる事実誤認

原判決は、被告会社の昭和三十六年四月一日から昭和三十七年三月三十一日までの事業年度における実際の所得金額が金二千九十七万四百八十五円であつたのに、金八百七十六万六千三百六十円なる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、右事業年度の法人税額金四百五十七万五百三十円をほ脱したと認定した。

しかし右認定中左の点が事実に反する。

(1) 実際の所得額と申告した所得額との差額は、金壱千二百二十万四千百二十一円であるが、右の内訳は

架空仕入 三、三二六、四六六円

棚卸の除外 八、八七七、六五五円

であり、架空仕入れ分については被告人も之を認め争わない。

しかし、棚卸の除外については、昭和三十五年度所得確定申告後(決算後)商品在庫が申告より金三百万円に相当する分多い(三百万円分否認)と認定課税されたのであつたが、被告会社支配人武藤佐太郎から、代表取締役である被告人鎌田逸郎に報告がなかつたので、鎌田は帳簿外在庫品を書いたメモを訂正しなかつた。

次に昭和三十六年度決算にあたつて、鎌田被告は数十年来フクミ資産として帳簿外在庫品をメモしていたその数量から、昭和三十五年度に否認された三百万円を差引かなかつた訳である。右メモを証拠として帳簿外在庫品の在高を決定されたので、少くとも三百万円の在庫品については二重課税となつたのである。

なお、棚卸除外の調査は実際現品を調査したものではなく、長年累積した被告人の在庫品メモを証拠としたもので果して税金ほ脱を認めるための犯罪事実の証明ありと称し得るかは頗る疑があるものと言わなければならない。

第二点 量刑不当

今日の中小企業は、全く政府のひ護がないので(大企業は金融、助成等政府は容易に倒産させない)自分の企業は自分で防衛しなければならないのである。戦後の我が国中小企業は常に動ようし、一進一退の業績であつて、フクミ資産なくしては絶対安定した経営は出来ない実情であつた。

本件の法人税ほ脱は、大部分が棚卸資産除外に関するもので、これを根こそぎ徴税することは中小企業を破産に導くに等しいものであつて、少くとも情状として充分考慮の余地があると考える。

既に被告会社は重加算税を納入しており、更に原審のような多額の罰金刑は酷に失するものである。また被告人鎌田に対する科刑も亦右同様重きに失するものである。

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